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第3章 植物と微生物 Tweet


光合成の発明

 生命は互いに他の生命と共生しながら進化しました。これは生命の始まりから続く伝統的な手法です。
生命は最初の1個から始まりましたが、次第に分化し様々な機能を持つようになります。
 あるとき、小さな生物が太陽光線から糖分を合成する(今日、葉緑素と呼ばれる)機能を身につけました。この機能を葉緑素を持たない別の生物が自らの体の中に取り込んだのです。同じようにして、葉緑素を持つ生物は増え続けました。(これらの生物は小さな原始微生物です。)
 このようにして、生物は互いの機能を交換しあって進化しました。
小さな微生物は互いに養分を補完しあいます。高等生物も又、微生物のチカラを借りて進化してゆきます。


イラスト3-1

 このイラストの「ちょっと進化した微生物」は、進化の過程で「光合成能力を持った微生物」「窒素を栄養とする微生物」「酸素を栄養とする微生物」の機能をコピーして体の中に取り込むことに成功したのです。

空気中の養分

 千葉県茂原市の西隣に長南町があります。長南町は長南一族の先祖の地で菅原道真の血筋ということです。子孫は荘内藩に多く住み着きました。長南町は紅花の発祥地としても有名です。「長南年恵」は、明治の頃に超能力者といわれた女性で、様々な心霊現象によって人々を救済したとして今なお人々にあがめられています。この年恵はわずかな水しか飲まずに10年以上を過ごしたことで知られています。

 私は、人間というものは水だけで生きて行けるのか考えていました。よく、仙人は霞を食べて生きるといいます。 年恵は兄弟が残した記録によると生水を飲み、湯冷ましを飲むと吐血したとあります。また、生の甘藷を多少齧ったそうです。
 人の腸内には様々な微生物が人間に必要な栄養を生産しています。微生物の有機物合成能力は、生物にとって必要不可欠のものです。固形の有機物がなくても腸内の酸素、炭素、水素、窒素から無限に近い種類のビタミンやミネラルを合成できます。

土を食べる人間

 最近のテレビ報道で、東南アジアの、インドネシアかタイの国に、土を主食とする人がいる事を知りました。この人は、土が急に食べたくなり、それ以来、土しか食べないそうです。画面で見る限り、粘土質の土を食べているようでした。粒子の荒い土は、じゃりじゃりしそうで消化にも良さそうにみえません。道端の土でも、場所により味の優劣を感じていました。

 パプア・ニューギニアに住むパプア族はさつま芋を主食としています。年間の食物の96%は芋です。あるとき学者が調べたところ人間の体力を維持すべき最低の窒素量を主食の芋だけではまかないきれない事が判明しました。残りの窒素分は何処から調達されたのか。
 なんと、食物から得る窒素の同じ量の窒素分を腸内菌が空気中から取り込み、人間の体内に栄養として供給していたとの結論になりました。

 キリストの言った「人はパンのみにて生くるにあらず。」は、目に見えるパンだけではなく目に見えない微生物の技を見ていたのでしょうか。

 現在、動物である人間にしても食物の分解に微生物の存在は欠かせません。胃酸で溶かした食物をさらに分解し体内に吸収されやすい物質にするのは腸内細菌として、微生物や微生物の造る酵素などです。

植物の消化器官とは

 植物は、光合成エネルギーだけでは育ちません。土の中の養分を吸収することが必要となります。しかし、全て根に吸収されやすい様に養分がある訳ではありません。そこで微生物の助けが必要となり、そこでイラスト3-2のように消化器官(機構)を根の外に有します。人間などの動物は体の中の腸の中に多数の微生物が生息し食べ物を消化しています。


イラスト3-2 植物と動物の消化機関の対比

 このイラストに見るように、ここに移動する生物と移動しない生物の最大の違いがあります。
動物は、体内に消化器官を有し、植物は根の周囲を自らの消化器官として利用しています。微生物も根の周囲で根と共生し、お互いの存在がなければ生きて行けません。


 人間の場合、おならがでますね。おならの正体は、腸内細菌が働く(発酵する)ときに出る副産物(ガス)です。おならを我慢するとそのガスは何処に行くかというと、そういったガスが好きな腸内細菌がそのガスを食べてしまいます。そして人間が必要とするミネラルやビタミンなどに変換し、養分として腸壁から体内に吸収されます。

臭いガス

 根の周りでも同じ現象が起きていると考えられます。
 嫌気性の菌は臭いガスを出すことがあります。このガスを食べる微生物がいないと根はガスの障害を受けてしまいます。
 嫌気性の菌が増えて、臭いガスを食べる微生物が少ない状態。この状態を微生物バランスが崩れいてる状態と言います。原因は、栄養の過多によるものです。この場合、嫌気性菌の好む栄養物(エサ)が多すぎたため、嫌気性菌が異常に増殖してしまった事が原因と考えられます。

土壌も人間と同じで、肉ばかり食べる偏食をしていると、体調を崩す元となります。
通常は土壌の根の周囲の微生物達の食物連鎖が植物の根の吸収を助けています。


イラスト3-3:根と微生物の関係 カラフルな丸い玉が微生物達を表しています。

根に寄生する菌

 松の木の立ち枯れ被害が各地で報告されています。原因はマツノザイセンチュウという小さな虫が原因です。
 私達の良く知る菌があります。マツタケです。マツタケは松の根に寄生して菌糸を松の根の中まで張り巡らせて、松の木と栄養分の交換を行っています。マツタケは、松に寄生はしますが決して松を枯らすことはありません。また、マツタケは松以外の木には寄生しません。
 このように、特定の種類の木と共存関係にある菌(微生物)がいます。菌根菌と呼ばれていたりしますが、ここでは全て根圏菌と表現します。



イラスト3-4 根圏域での根と微生物共生イメージ図

菌と根が栄養交換

 根の周囲には、様々な栄養物質が微生物によって造られています。
 根圏は根からの距離にしてどれくらいでしょうか。微生物は小さいので動くスピードがどんなに速くとも、大変な時間がかかりますが、たいていの微生物は菌糸を伸ばして成長します。これにより、多方向へ菌糸を伸ばし養分を求めます。
 根の周囲の微生物の数を調べたところ根から5ミリ位までが、微生物が多くそれから離れると段々と微生物数が減っています。
 植物は微生物を呼ぶために、根から栄養豊富な分泌液を出し、微生物を誘います。又、微生物は有機物を分解し根が吸収しやすいよう消化を助けます。根は微生物と共生関係を築き植物体として生きています。

土の中の空気成分

 ↓この表は、地球温暖化の問題から空気の組成を調べたものです。土壌の中の空気は酸素が消費され、二酸化炭素の量が大気中の3倍〜300倍も濃い状態にあることがわかります。また、窒素も多くなっています。
二酸化炭素・窒素・メタンの増加は、土壌中の有機物が微生物により分解されたものと考えられます。もちろん根の分泌物も含まれます。
 極微量のガス成分も微生物の栄養源となっていたりします。


清浄な大気と土壌空気の成分組成
成分 和名
大気
土壌空気
vol%
vol%
N2 窒素 78
75〜90
O2 酸素 21
2〜21
Ar アルゴン 0.93
0.93〜1.1
CO2 二酸化炭素 0.0367
0.1〜10
CH4 メタン 0.000179
trace〜5
N2O 一酸化二窒素 0.0000316
trace〜0.1


ppmv
He ヘリウム 5.2
その他
各種炭化水素、NH3,NO,H2,H2S,CS2,COS,CH3SH,揮発性アミン、揮発性有機物など多数
Kr クリプトン 1
H2 水素 0.5
CO 一酸化炭素 0.1
Xe キセノン 0.08
O3 オゾン 0.02
NH3 アンモニア 0.01
NO2 二酸化窒素 0.01
SO2 二酸化硫黄、無水亜硫酸、亜硫酸ガス 0.0002
陽 捷行,1991;IPCC,2001
表3-1 大気中と土中の空気成分

 土壌のなかに生きる微生物、その種類が多いほど豊かな土壌といえると思います。
 森林の中には多様な植物が植生しています。当然、それぞれの根に寄生する微生物も増えます。植物体の違いによる分泌液の多様さ、微生物の多様さ、が豊かな緑を育みます。
 単一の作物を作ることが多い日本の耕地ですが、森を見習い土作りを行うことが求められています。